ベースブレッドの糖質は高いの?GI値や糖尿病患者への影響を考察

ベースブレッドの糖質は高い?

2019年3月に「完全栄養食※」として発売されたベースブレッドは、栄養バランスが偏った日本人の食生活を改善することが期待され、2023年1月現在も売上を伸ばし続けている食品です。

しかしブレッド(パン)の主成分は小麦粉ですので、糖質が高いのではと思われる方も多く、本記事ではベースブレッドと糖質の関係性について調査をしています。

本記事ではベースブレッドの糖質について、次のような疑問をお持ちの方を対象に記事を書いています。

  • ベースブレッドはパンなので糖質がかなり高いのでは?
  • ベースブレッドは糖尿病でも食べられるの?
  • ベースブレッドのGI値は高いの?
糖質と炭水化物の違い

糖質と炭水化物は混同して理解されがちですので、簡単に解説すると次のようになります

炭水化物=糖質+食物繊維

食物繊維と糖質を足したものが炭水化物なのですが、食物繊維は摂取しても消化されずエネルギーとなりにくため、炭水化物=糖質と考えても差し支えない場合が多いです。

MEMO

国民の健康を保持・増進するためのエネルギーや栄養素の数値は、厚生労働省が5年に一度「日本人の食事摂取基準」として公表しており、この記事でも「日本人の食事摂取基準」の数値を使用しています。

栄養素の摂取目標となる数値は科学的根拠の有無などにより「推定平均必要量・推奨量・目安量・目標量」など呼び名がわかりますが、当記事では一括して「厚生労働省が定める数値」と表記しています。

また必要となる栄養素の数値は年齢や性別によって異なりますが、基本的には30代で運動量が通常程度の男性を基準にしています。

ベースブレッドの糖質は高いのか?|かなり低いです

では実際にベースブレッドの炭水化物・糖質量を調査していきます。

まずはベースブレッド各種2袋に含まれている炭水化物を厚生労働省が推奨する値と比較し、その後ベースブレッドと普通の食パン(超熟)の炭水化物含有量を比較します。

ベースブレッドを2袋摂取しても厚生労働省が推奨する値には達しない

まずはベースブレッド各種1袋に含まれる炭水化物(糖質)量をベースブレッドの種類ごとに書き出し、カロリー換算します。

種類(味)1袋あたり糖質熱量(kcal)
シナモン味26.1g104.4
メープル味27.1g108.4
プレーン20.7g82.8
ミニ食パン24.1g96.4
カレー22.6g90.4
チョコレート29.1g116.4
ミニ食パン
レーズン味
34.3g137.2

炭水化物(糖質)は1gあたりが4kcalですので、1袋あたりの炭水化物量(g)に4をかけたものが1袋あたりのカロリーとなります。

ベースブレッドの公式によるとベースブレッドは1食を2袋で計算しているため、2袋(1食分)に計算をし直し食物繊維も加味した糖質のカロリーを計算し表にしました。

種類(味)1食分(2袋)から
得られる
炭水化物の熱量(kcal)
シナモン味208.8
メープル味216.8
プレーン165.6
ミニ食パン192.8
カレー180.8
チョコレート232.8
ミニ食パン
レーズン味
274.4

上記がベースブレッド各種2袋あたりの炭水化物量なのですが、これだけではベースブレッドの糖質が高いのかわかりませんね笑

ベースブレッドの糖質が高いのかを決定するための基準が必要です。
基準となるのは厚生労働省が公表している2020年度版日本人の食事摂取基準です。

「日本人の食事摂取基準」では、1日の食事のうち糖質(炭水化物)からどの程度のカロリーを摂取するべきかを公表しており、その割合は次のとおりです。

  • 糖質 50-65%

1日の摂取カロリーのうち、炭水化物からは50-65%を摂取すれば、健康的だと言えるわけです。

では、我々は1日にどのていどのカロリーを摂取しているのでしょうか?
一般的に運動量が通常程度の場合、1日に摂取すべきカロリーは30代男性で2700kcal、30代女性は2000kcalとされています。

以上の数字から、運動量が通常程度の30代男性・女性が、1食に摂取すべき炭水化物のカロリーの範囲は次のようになります。

  • 男性 450-585kcal
  • 女性 367-477kcal

ベースブレッドは2袋が1食分ですので、ベースブレッド2袋に含まれる糖質(炭水化物)から得られるカロリーが上記範囲内に収まっていれば「ベースブレッドの糖質は1食分としては普通だね」ということになります。

では早速先ほど作成したベースブレッド2袋のカロリー表と、厚生労働省が定める値を比較します。

ベースブレッド2袋に含まれる炭水化物と厚生労働省の値を比較

左側オレンジ線が理想的な1食あたりの炭水化物摂取量の上限と下限です。
つまり上限と下限の間にベースブレッド各種の値があれば、50-65%のカロリーを炭水化物から得られていることになります。

結果はどうでしょう?

ベースブレッドを2袋から得られる炭水化物(糖質)のカロリーは、30代の男性では厚生労働省が定める値の下限にすら達していません。

このことからベースブレッド2袋はかなり糖質が低い食品であることがわかります。

ベースブレッドの炭水化物(糖質)を同一カロリーの食パンと比較

次にベースブレッドと普通の食パン(超熟)の炭水化物量を比較します。

完全栄養食※とは言えベースブレッドはパンですので、スーパーなどで販売されている食パンと比較することでベースブレッドの真の姿が見えてくるはずです。

比較したのは超熟4枚切り2枚と、ベースブレッドメープル味2袋に含まれている炭水化物量です。
両者を選択した理由は、超熟4枚切りは1枚当たり246kcal、ベースブレッドメープル味は1袋あたり264kcalとカロリーが近いためです。

結果をご覧ください。

ベースブレッドメープルと超熟の炭水化物量比較グラフ

実は、超熟4枚切り2枚を摂取しただけでは炭水化物量摂取量は厚生労働省が定める値に達しません。
さらにベースブレッドのメープル味2袋は超熟よりも遥かに炭水化物量が少ないことがわかります。

これらのことからも、やはりベースブレッドは炭水化物(糖質)がかなり制限された食品であると言えるのです。

ベースブレッドを必要カロリー分摂取しても炭水化物・糖質は高くない

しかし実はベースブレッドは1食(2袋)あたりのカロリーは500kcal前後であり、2袋を食べてもカロリーが不足しています。
よってベースブレッドの糖質が少ないのは単にベースブレッドのカロリーが全般的に不足しているだけ、とも言えてしまいます。

そこでベースブレッドを1食に必要なカロリー分(男性900kcal,女性667kcal)摂取した場合、炭水化物(糖質)から得られるカロリーを計算しました。

結果は下記表のとおりです。

ベースブレッド900kcalに含まれる炭水化物と厚生労働省の値を比較

例えベースブレッドを必要カロリー分食べたとしても、厚生労働省が定める値の下限値には全種類達さないことがわかります。
このことから、カロリーベースで考えてもやはりベースブレッドは糖質(炭水化物)量が少ない食品であると言えます。

加えて言えば、ベースブレッドはパン食品であり主原材料は小麦全粒粉です。

本来糖質(炭水化物)が多くなるはずのパン製品にも関わらず、ベースブレッドが上記のように糖質が低い商品である点は、ベースフード株式会社の企業努力の賜物であると言えるでしょう。

ちなみにベースブレッド900kcal分は次のような量となるため、1食分としてはかなりボリュームが多いです(右の食パンは大きさを比較するため参考に置いています)。

ベースブレッド900kcal分

毎回上記画像の量のベースブレッドを食べる方は少ないと思いますので、参考までにお願いします。

なお炭水化物量がカロリーベースで少ないということは、ベースブレッドのタンパク質と脂質量は多くなるとことを意味しています。
またビタミン・ミネラルが豊富であり、先に述べたように糖質が少ないことからベースブレッドは糖質制限ダイエットに向いる商品であるとも言えるでしょう。

ベースブレッドは糖尿病患者でも食べて良いの?

さて本記事で検証したとおり、一般の食事と比較すると糖質(炭水化物)量が少ないと言えるベースブレッドですが、糖尿病患者であっても安心して摂取することができる食品なのでしょうか?

糖尿病患者の治療には、運動療法・食事療法・薬物療法がありますが、本記事では食事療法について掘り下げを行います。

糖尿病の食事療法について

患者さんのための糖尿病ガイド糖尿病診療ガイドライン2019から抜粋すると、糖尿病患者の食事療法は次のようなポイントがあります。

  • 目標体重を設定し、PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)バランスのとれた食事を行う
  • 1日3回規則的な食生活で、ゆっくりかんで腹八分目で食べる
  • 食物繊維を含む食品を摂る(食後血糖値抑制のため)

まず1日に摂取すべきカロリーは、単純に少なければ良いというものではなく、患者さん個人の目標体重と身体活動レベルに基づいて決定されます。

そのカロリーをどの三大栄養素から摂取すべきか、つまりPFCバランスについては、明確なエビデンス(根拠やデータ)があるわけではありません。
つまり炭水化物の摂取量と糖尿病発症リスク・糖尿病管理状態との関連性は確認されておらず、2013年に出された「日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」では以下のPFCバランスが目安とされています。

  • 糖質 50-60%
  • タンパク質20%以下
  • 残りが脂質

上記の数字は厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準」と比較しても大きな差異はなく、糖尿病患者は極端な糖質制限を行う必要はないことがわかります。

次に食事パターン、つまり「規則的に3食を摂ること」に関して解説します。

規則的な食生活が糖尿病患者にとって必要な理由は、朝食を抜いたり、遅い時間帯に夕食を摂取するなどの不規則な食生活が肥満や血糖コントロール不良につながり、合併症リスクが高くなるためです。
また朝食を抜く習慣は2型糖尿病のリスク要因となることが示されています。

また咀嚼(噛む力)の弱い50歳以上・高齢者は血糖コントロールが乱れることがあるため、食事はゆっくり噛み、野菜などの食物繊維を多く含む食材を先に食べ、食後血糖の上昇を抑制することも食事療法のポイントの1つとなります。

なお、食物繊維に関しては炭水化物摂取量とは関係なく1日20gの摂取が推奨されています。

以上の点を踏まえてベースブレッドが糖尿病でも食べることに適した食品であるか否かを検証します。

ベースブレッドは糖尿病にふさわしい食事か?

まずベースブレッドのPFCバランスについて見ていきます。

日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」では、食事のPFCバランスについて糖質50-60%,タンパク質20%以下という数値が目安としてあげられていましたが、ベースブレッドのPFCバランスは目安と比較するとどうなるのでしょうか?

ベースブレッド各種のPFCバランスと、目安を比較し表にまとめました。

炭水化物脂質タンパク質
目安50-60%20%以下
シナモン味41.9%35.9%21.0%
メープル味43.2%35.9%20.0%
プレーン41.6%32.2%23.4%
ミニ食パン39.9%36.7%23.4%
カレー味37.6%42.6%19.8%
チョコレート味46.7%32.4%20.9%

ご覧のように、ベースブレッドは炭水化物が少なくタンパク質が多い構成となっているため、食事療法の目安とは合致しないことがわかります。

糖尿病=糖質制限という図式は必ずしも当てはまらないため、ベースブレッド以外の食事を摂取する際には、炭水化物が多めでタンパク質が少ない食事を選ぶなどの工夫が必要となるでしょう。

次に、糖尿病は1日3回の規則的な食生活が必要となります。

ベースブレッドは手軽に食事を摂ることができるため、朝食を抜く食生活になっている方などは、食生活にベースブレッドを取り入れることで規則正しい食生活を行うことができるようになるでしょう。

袋を開封して直ぐに食べられるベースブレッドはとても便利ですよ。

最後にベースブレッドに含まれる食物繊維量を考察します。
食物繊維は1日20gを目安に摂取することが糖尿病には推奨されていますが、ベースブレッドにはどの程度の食物繊維が含まれているのでしょうか?

ベースブレッド1袋または2袋に含まれる食物繊維量を表にしてみます。

味の種類1袋2袋
シナモン味3.3g(16.5%)6.6g(33.0%)
メープル味3.3g(16.5%)6.6g(33.0%)
プレーン3.2g(16.0%)6.4g(32.0%)
ミニ食パン3.2g(16.0%)6.4g(32.0%)
カレー味3.6g(18.0%)7.2g(36.0%)
チョコレート味4.2g(21.0%)8.4g(42.0%)

ベースブレッドは2袋で1食分となりますが、1日20gの食物繊維を目標とするのであれば、1食に6.7g程度の食物繊維摂取が必要となります。

2袋あたり6.4g~8.4gの食物繊維が含まれるベースブレッドは、目標となる1食あたりの食物繊維量(6.7g)を概ね達成することができます
つまりベースブレッドは食物繊維の観点からは、糖尿病の方にふさわしい食品であると言えるでしょう。

またベースブレッドは2袋あたりのカロリーは413~545kcalと、1食分にしては低カロリーであるため、減量が必要な糖尿病患者にとっても有効な手段の1つと言えるでしょう。

ベースブレッドのGI値は?

糖尿病血糖コントロールの方法の1つに、GI値の低い食事を摂取する方法が知られています。

GIの定義は次の通りです。

GIは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。オーストラリアのシドニー大学ではグルコースを基準とした場合、GIが70以上の食品を高GI食品 56~69の間の食品を中GI食品 55以下の食品を低GI食品と定義しています。

大塚製薬HP

ではベースブレッドのGI値はいくらなのでしょうか?

ベースブレッドのGIを正確に測定するには、ベースブレッド摂取後の血中糖濃度を測定しなければいけないのですが、今のところそのようなデータは見当たりません。

そこでベースブレッドの代わりに小麦全粒粉パンのGI値を調査した結果、次のようなGI値であることがわかりました。

小麦全粒粉のGI値

ベースブレッドの原材料は小麦粉ではなく小麦全粒粉を使用しており、小麦全粒粉を使用したパンを「全粒粉パン」と呼びます。

一般的なパンに使用される小麦粉は、小麦の表皮と肺芽を除いた胚乳部分を粉にしたものですが、小麦全粒粉は表皮と肺芽を取り除かず、小麦をまるごと粉にしたものです。

小麦全粒粉の表皮や肺芽には豊富なビタミン・ミネラルが含まれており、それがベースブレッドが栄養豊富な理由の1つとなっています。

しかしGI値に関しては74前後と高GI値食品であると言え、GI値を期待してベースブレッドを摂取するのはやめたほうが良いでしょう。

小麦全粒粉のGI値を50とするHPもありましたが出処が不明で、日清製粉グループの論文でも小麦全粒粉パンのGI値は65.2となっています。

しかし、そもそもGI値が糖尿病の改善に影響を与える点についても次のようにはっきりとした根拠はありません

GIおよびGL(glycemic load)と2型糖尿病の発症リスクの関係を検討したメタ解析では、GIおよびGLの低い食材をとると、糖尿病の発症リスクが低減するとしている。日本人においても、低GIならびに低GLの食品の摂取量が多いほど、糖尿病の発症リスクが減少したとの報告もある。

しかし、糖尿病の管理、糖尿病における死亡率との関係については検討例が少なく、糖尿病患者の食事療法に積極的に取り入れるべきかどうかについては、現時点では十分な根拠があるとはいえない。

糖尿病診療ガイドライン2019

ですので、糖尿病の方はGI値ではなく、PFCバランス、規則的な食生活、食物繊維の点からベースブレッドを購入することをおすすめいたします。

ベースブレッドの糖質は高いのか?まとめ

以上、ベースブレッドの糖質について述べてきましたが、本記事をまとめると次のようなことが言えます。

ベースブレッドの糖質、糖尿病・GI値との関連性についてのまとめ

ベースブレッドはパン製品でありながら、かなり糖質が低い製品であり、仮に900kcal分のベースブレッドを摂取しても厚生労働省が推奨する1食分の炭水化物量には満たない(30歳・男性・運動量が通常程度の場合)。

 

糖質が少ないため、糖尿病患者にベースブレッドを勧められるように思えるが、糖質が少ないことは糖尿病患者にベースブレッドを勧める理由にはならない。
糖尿病ガイドラインに照らし合わせると、規則的な食生活・食物繊維の豊富さの点でメリットがあると言える。

 

ベースブレッドのGI値は諸説あるものの、小麦麦芽粉末を主原材料としていることからGI値は60~70程度であると推測できる。

なお炭水化物と同様に、ベースブレッドのタンパク質量についての考察記事や、ベースブレッドの脂質量に関する考察記事も執筆していますのでご覧いただければと思います。

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